顎関節症は、顎関節の痛みや口の開閉がしにくくなるなどの症状の総称で、日常生活に大きな支障をもたらすことがあります。その治療法の一つに「スプリント治療」があります。
今回は、スプリント治療の概要や効果、製作方法、さらに似た治療法であるナイトガードとの違いについて解説します。
1. スプリント治療とは?顎関節症に効果的な理由を解説
スプリント治療は、顎関節症の症状を軽減するために、歯列全体を覆う透明な装置(スプリント)を使用する治療法です。このスプリントを装着することで、顎の筋肉や関節にかかる負担を軽減し、顎関節症の症状改善を目指します。
スプリント治療が顎関節症で用いられることには、主に以下のような理由があります。
①咬み合わせの調整
スプリントは、歯並びにかかる負荷のバランスを整えることで、顎関節や筋肉にかかる負荷を分散します。これにより、顎関節の炎症やあごの周囲の筋肉の緊張が緩和されます。
➁筋肉のリラクゼーション
顎の筋肉にかかる力をスプリントでコントロールすることで、筋肉の緊張や収縮が和らぎ、痛みの軽減につながります。
➂歯の保護
歯ぎしりや食いしばりによって生じる歯のすり減りを防ぎます。これにより、歯のダメージを軽減しつつ、顎関節への負荷も軽くなります。
➃外科的処置を伴わない
スプリント治療は外科的な処置を伴いません。そのため、外科的な処置に伴うリスクはなく、幅広い患者さんに適用しやすい治療です。
2.顎関節症治療用のスプリント製作の流れ
スプリントは、患者さん一人ひとりの口腔内に合わせてオーダーメイドで製作されます。そのプロセスは次の通りです。
①診断とカウンセリング
歯科医師が患者さんの顎関節や咬み合わせの状態を確認し、スプリント治療が適切かどうかを判断します。
この際、口を開けるときの痛みや音、筋肉の緊張度、歯ぎしり・食いしばりの有無などについて、詳細に調べます。
➁型取り(口腔内スキャン)
スプリントを製作するために、患者さんの口腔内のスキャンをします。かつては印象材という粘土のようなものをお口いっぱいに入れて型採りをしましたが、当院では口腔内スキャナーを用いておりますので苦しい思いをしなくても大丈夫です。

③咬み合わせの調整
口腔内のスキャンデータを元に、顎関節や咬み合わせに適したスプリントを設計します。この段階では、顎の負担を減らすために最適な位置を考慮して設計されます。
④スプリントの製作
歯科技工士が患者さんの歯型に基づいてスプリントを製作します。スプリントは透明な樹脂素材を使用しており、軽量で耐久性が高く、装着感が良いのが特徴です。
⑤ 装着と微調整
完成したスプリントを患者さんの口腔内に装着し、歯科医師が細かい調整を行います。特に咬み合わせや装着感に問題がないかを確認し、必要に応じて削って調整します。
⑥使用方法の説明
スプリントは主に就寝時に装着しますが、症状によっては日中も使用する場合があります。歯科医師や歯科衛生士からお手入れ方法や装着時の注意点について説明を受けます。
3. 顎関節症治療のためのスプリントとナイトガードの違いとは?
スプリントとナイトガードはどちらも口腔内に装着する装置ですが、それぞれの目的や特徴には明確な違いがあります。
スプリントの特徴
スプリントは顎関節症の治療を目的として使用されます。主に咬み合わせを調整することで、顎関節や周囲の筋肉にかかる負担を軽減し、痛みや不快感を和らげます。また、顎の位置を安定させる役割もあり、顎関節症による症状を改善するために使用されます。
ナイトガードの特徴
一方でナイトガードは、顎関節の保護に重点を置いておらず、歯ぎしりや食いしばりから歯を保護するために使用されます。歯の摩耗や損傷を防ぐことを目的としている分、厚みを均一化しやすくまた、薄く仕上げることが可能です(患者さんの歯並びにもよります)。
両者の主な違い
スプリントは顎関節や筋肉に対する治療器具であり、精密な設計が必要になるため費用も高くなる傾向があります。一方でナイトガードは歯の保護を目的とした予防器具で、構造がシンプルな分、比較的安価に製作できる点が特徴です。
適切な装置を選ぶためには、それぞれの症状や目的を明確にすることが大切です。歯科医師と相談し、自分に合った治療法を選びましょう。
 
 
まとめ
スプリント治療は、顎関節症による痛みや筋肉の緊張を緩和する治療法の一つであり、適切な咬み合わせを維持するための重要な役割を果たします。一方、ナイトガードは主に歯ぎしりや食いしばりから歯を守る装置であり、スプリントとは異なる目的で使用されます。顎関節症の症状や原因は個人によって異なるため、最適な治療法を選ぶには歯科医師による診断が欠かせません。
東京都国立市の歯医者 Premium Oral Design 国立歯科室では、顎関節症の診断からスプリント治療、ナイトガードの製作まで対応しております。顎の痛みや違和感でお悩みの方はご相談ください。
監修
Premium Oral Design 国立歯科室
院長 関 豊成